妊婦さんの歯周病予防について、日本臨床歯周病学会の報告によると、歯周病にかかっている人は普通のお産をした人に比べて早産や低体重児のリスクが高くなることがわかっています。1996年に米国で行われた研究でも、妊娠中の女性が歯周病に罹患している場合、早期低体重児出産のリスクが7倍も高まることが報告されました。

早期低体重児出産は、妊娠37週未満で2,500グラム以下の新生児を出産する状態を指します。妊娠や月経で分泌される女性ホルモンは、血中から歯と歯茎の境目にある溝に到達し、歯周病菌の増殖を促進する特徴があります。そのため、妊娠中の女性は歯周病のリスクが高まるのです。

妊娠性歯肉炎

一般に妊娠すると歯肉炎にかかりやすくなるといわれています。

これには女性ホルモンが大きく関わってくるといわれており、特にエストロゲンという女性ホルモンがある特定の歯周病原細菌の増殖を促すこと、また、歯肉を形作る細胞がエストロゲンの標的となることが知られています。そのほか、プロゲステロンというホルモンは炎症の元であるプロスタグランジンを刺激します。

これらのホルモンは妊娠終期には月経時の10~30倍になるといわれており、このため妊娠中期から後期にかけて妊娠性歯肉炎が起こりやすくなるのです。
ただ、基本的には歯垢が残存しない清潔な口の中では起こらないか、起こっても軽度ですみますので、妊娠中は特に気をつけてプラークコントロールを行いましょう。油断すると出産後に本格的な歯周病に移行する場合もありますので、注意が必要です。

また、まれに妊娠性エプーリスという良性腫瘍ができる場合もありますので、その場合はかかりつけの歯医者さんにお早めに受診してください。

歯周病と低体重児早産

妊娠性歯肉炎

近年、さまざまな歯周病の全身への関与がわかってきました。
なかでも妊娠している女性が歯周病に罹患している場合、低体重児および早産の危険度が高くなることが指摘されています。

これは口の中の歯周病細菌が血中に入り、胎盤を通して胎児に直接感染するのではないかといわれています。その危険率は実に7倍にものぼるといわれ、タバコやアルコール、高齢出産などよりもはるかに高い数字なのです。歯周病は治療可能なだけでなく、予防も十分可能な疾患です。
生まれてくる元気な赤ちゃんのために、確実な歯周病予防を行いましょう。

妊娠性歯肉炎になるつの原因

妊娠性歯肉炎は、女性ホルモンの影響や悪阻による清掃不良などが原因です。

妊婦に歯科健診を勧める理由

自治体が妊婦に歯科健診を勧める理由は、歯周病の有無をチェックするためです。妊娠が発覚したり、妊活を行っている女性は、ぜひ歯周病の検査を受けることをおすすめします。なぜなら、歯周病菌に感染すると炎症性サイトカインが過剰に出され、早産や低体重児のリスクが高まることが知られているからです。

炎症性サイトカインは炎症を促進する細胞間物質であり、炎症部分から血管にも入り込むことがあります。妊娠中に炎症サイトカインの血中濃度が高くなると、それが出産の開始の合図となり、陣痛や子宮筋の収縮などが起こると考えられています。

また、妊娠中は女性ホルモンの影響で唾液の分泌量が減少します。唾液には殺菌作用と潤滑作用がありますが、その機能が低下するため、歯肉炎や歯周病を引き起こしやすい環境になっています。歯茎の表面が腫れ上がり、炎症が歯槽骨まで達すると歯がグラグラしてきます。この状態を妊娠性エプーリスと呼びますが、歯周病を伴う場合には早産や低体重児のリスクが高まることが報告されています。

また、歯周病は人から人へ感染する感染症です。歯周病の原因である細菌は、唾液を介してうつるため、歯周病に罹患している人とキスや食器などを共有することにより感染する可能性があります。そのため、周囲への感染を抑制するためにも、適切な歯周病治療を行い、口の中の細菌を減らすことが大切です。

妊娠性歯肉炎と子供への影響

お子様が持っていなかった細菌が、歯周病の家族からうつることはありますが、すぐに発症することはありません。一般的には歯周病には遺伝性はないと考えられていますが、最近では小さな子供にも歯肉炎が増えていることが問題視されています。子供は大人に比べて歯周病になりにくいですが、歯周病にかかる可能性はあるため、小さいうちから定期的な検診を受け、正しい口腔ケアを身に付けることが重要です。

侵襲性歯周炎

侵襲性歯周炎(若年性歯周炎)は、10〜20代に多く見られ、急速に進行する特徴があります。一般的な歯周病とは原因や治療法が異なり、改善が難しいとされています。侵襲性歯周炎は全身症状はなく、歯周炎の症状だけが現れますが、前歯や奥歯に限定して発症することもあります。家族内で同様な症状が現れることもあります。早期治療が必要で、一般的な歯周病治療に加えて、薬物療法や外科的治療が行われます。

侵襲性歯周炎(若年性歯周炎)の初期症状は、歯茎の腫れや出血です。この段階で適切な治療を行えば完治することができます。しかし、放置しておくと歯を支える骨への影響が出始め、歯槽骨や歯根膜が破壊されて歯がグラグラし、痛みを伴うようになります。最終的には歯が抜け落ちてしまいます。

以上のように、妊婦さんの歯周病予防や子供の口腔ケアは重要なテーマです。正しいブラッシングや定期的な歯科医院でのメンテナンスを行うことにより、歯周病を予防することができます。また、家族内での感染を防ぐためにも、適切な歯周病治療を受けることが大切です。早期治療を行うことで、侵襲性歯周炎(若年性歯周炎)の進行を抑えることも可能です。ぜひ、歯周病予防に取り組んでいただき、健康な口腔環境を保つことをおすすめします。

妊娠性歯肉炎

妊娠性歯肉炎は、妊娠中に起こりやすい歯肉の炎症です。妊娠中はホルモンの分泌が増えるため、口内の細菌のバランスが崩れ、歯肉炎が起こりやすくなります。妊娠5~20週頃から、歯肉が腫れたり出血したりすることがありますが、必ずしも全ての妊婦さんが歯肉炎になるわけではありません。日頃からの歯磨きの励行が、歯肉炎を予防するために重要です。

妊娠性歯肉炎の主な症状としては、歯肉の色がピンクから赤っぽく変化し、ぷにぷにと腫れてくることが挙げられます。また、歯磨きの際に歯肉からの出血が見られることもあります。これらの症状は、口内の血行が増加し、歯肉が敏感になるために起こるものです。

妊娠中は、歯科治療を避けることが望ましいとされています。特につわりの時期は、治療が困難になることが多いです。しかし、口内の清潔さを保つことは大切です。ご自宅での歯磨きを徹底することで、症状の改善が期待できます。また、歯科医院での治療が可能な場合には、スケーリング(歯石除去)やクリーニング(プラーク除去)などのプラークコントロールが行われます。妊娠性歯肉炎が進行して軽度歯周炎になることもありますので、定期的な歯科検診がおすすめです。

妊娠中は、抜歯やその他の歯科治療が制限されることがあります。痛みが出た場合には、非妊娠時に処方されていた薬を服用することができないため、痛みに悩まされることもあります。そこで、安定期に入ったら歯科検診を受けることをおすすめします。安定期に入ると、胎児の発育も安定し、歯科治療が可能になります。また、歯科検診を受けることで、口腔内の環境を整えることができます。

妊娠中は虫歯や歯周病になりやすい

妊娠中は、口腔内の環境が変化するため、虫歯や歯周病になりやすくなります。妊娠初期はつわりの影響で、ブラッシングが困難になることがあります。しかし、ブラッシング不足は虫歯や歯周病の原因となります。さらに、つわりにより胃酸が逆流し口内が酸性になると、虫歯のリスクが上がります。その結果、妊娠中は虫歯になりやすくなるのです。妊娠中は薬の服用が制限されるため、痛みに悩まされることもあります。また、ストレスも感じることでしょう。これらの問題は、母体だけでなく胎児にも影響を及ぼす可能性があります。

出産後は、赤ちゃんの子育てに忙しくなります。また、なかなか他人に預けることもできず、歯科医院への通院もままならないことがあります。そのため、虫歯や歯周病が進行し、歯を抜かなければならないケースもあります。ですから、安定期に入ったら一度歯科健診にお越しください。歯科健診を受けることで、早期に問題を発見し、適切な治療を受けることができます。また、予防のためのアドバイスも受けることができます。

妊娠性歯肉炎は、妊娠中に起こりやすい炎症ですが、適切なケアと定期的な歯科検診によって予防や治療が可能です。妊娠中の口腔ケアには特に注意が必要ですので、正しい歯磨きの方法を実践しましょう。母体の健康は赤ちゃんの健康にも繋がりますので、妊娠中の歯科健診はおすすめです。安定期に入ったらぜひ一度、歯科医院を受診してみてください。

妊娠期に歯肉炎になるのはなぜ?

ホルモンの変化により、妊娠期に歯肉炎になることがあります。

妊娠中の歯肉炎の治療法は?

妊娠中の歯肉炎の治療法は、以下の通りです。

歯磨きをしっかり行い、歯垢を除去します。
柔らかい歯ブラシと低刺激の歯磨き粉を使用します。
歯間ブラシやフロスを使って、歯と歯茎の間の汚れを取り除きます。
歯科医師の指示に従って、歯科クリニックでの定期的なクリーニングを受けます。
妊娠中に歯茎が腫れたり出血したりする場合は、歯科医師に相談しましょう。

ただし、個々の症状や状態によって治療法が異なる場合がありますので、歯科医師の診断と指示に従ってください。

妊娠中は歯肉炎になりやすい?

妊娠中は歯肉炎になりやすいです。

妊娠初期の歯肉炎はどのような症状ですか?

歯肉炎の妊娠初期の症状は以下の通りです。

– 歯肉の腫れや赤み
– 歯ぐきからの出血
– 歯ぐきの腫れや痛み
– 歯ぐきがやわらかくなる感じ

上記の症状がある場合、歯科医に相談することをおすすめします。

歯周病専門医が書いた、歯周病のお話し

TOP