食事形態の種類と定義
高齢者施設や病院では、高齢者一人一人の状態に合わせて、食事の形態を変えています。食事は安全で美味しく食べられることが基本です。そのため、体の機能の低下や体調に伴い、食事形態によっても食べやすさが変わってきます。例えば歯が抜け落ちたり、義歯によって食べ物が噛みにくい方、唾液の分泌量の減少や脳卒中などで脳神経障害が起こった方は飲み込みにくくなり、むせ込みやすい方もいます。
- 常食 常食とは、健康な人が普段日常生活で食べているような食事のことです。主食はご飯で、主菜や副菜は普通の形状のままです。うどんなどの麺やパンも食べられます。揚げ物をはじめ、繊維質のある食材も使用できます。摂食、嚥下、消化吸収が正常な方用の食事です。
- 軟飯(菜)食 軟飯(菜)食の主食は、柔らかいご飯やお粥です。うどんは麺を常食よりも柔らかくし、5~6cmにカットします。また、揚げ物など油が多いメニューを控え、柔らかく煮る、蒸すなど油を控えた消化の良い食事です。使用する食材も繊維質であるごぼうやたけのこや固い食材は控えます。胃腸が弱い方、咀嚼(そしゃく)機能が低下した方向けの食事です。
- きざみ食 きざみ食は、食べ物を約5mm~1cmほどに刻んで食べやすくし、咀嚼機能が低下した方が食べやすいようにした食事です。
- ミキサー食 ミキサー食は、主食であるお粥や主菜、副菜をそれぞれミキサーにかけ、ペースト状や液体状にしたものです。誤嚥を防ぐためにとろみ剤を使用し食べやすい状態にとろみをつけます。噛まずに食べられるので、噛む機能が低下した方、飲み込む機能が低下した方向けの食事です。
- 流動食 流動食は、主食はお粥を炊いたときにできる上澄み液の重湯、具なしの汁物、茶わん蒸し、ヨーグルトなど液状のものや、固形のものでも、噛まずに食べられます。手術後や高熱で胃が弱くなった方向けの食事です。
- ソフト食 ソフト食は、見た目は常食とは変わりませんが、舌で押しつぶせる程度の硬さで、すでに食塊となっているような形で、滑りがよく、移送しやすい形態のものです。食感は柔らかく、口の中でまとまりやすいため、飲み込みやすいので、常食の方からきざみ食、ミキサー食と幅広い方々の利用できる食事です。
摂食・嚥下機能に応じた食事形態を変える必要性
安全に美味しく食事をすることは、高齢者の栄養状態の維持につながります。楽しい食事は生きるための源にもなるので、食事から単に栄養素を補うだけでなく、視覚や味覚、嗅覚など五感を活かして食事をすることが、脳を刺激し、心もリフレッシュします。
食事を口から食べることで、唾液の分泌を促し、口を動かすことで筋肉も使います。食べることは姿勢の維持や消化吸収で全身を使うことにもなるので、機能維持にもなります。噛む力や飲み込む力、消化機能の低下など身体の機能が低下すると食欲も低下し、食事が偏ってしまい、栄養不足を招いてしまいます。また、安全で安心しておいしく食事をすることは、食べる楽しみが生きる力にもなっていきます。食べる行動の流れを理解し、どの過程でも摂食や嚥下がスムーズにいく、食事形態にすることが必要です。
誤嚥性肺炎の予防
誤嚥性肺炎は、高齢者の肺炎の主要な原因の一つです。飲み込む力が低下した高齢者は、食物や唾液が誤って気管に入り、肺に炎症を引き起こすリスクが高まります。歯科訪問診療では、口腔内の清潔を保ち、誤嚥を防ぐための指導が行われます。具体的には、口腔ケアの徹底や嚥下機能の評価とトレーニングが含まれます。
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